会社員となれば、仕事上でさまざまなお客様に出会う機会が多いと思います。
同じお客様と言えども、さまざまな内容の要望をいただいたり、時には商品やサービスへの不満を訴えるお客様もいるでしょう。
特に、要望に対して明確に対応をしなければ、攻撃的に言動してくる「クレーマー」と呼ばれる人も中にはいます。
今回は、さまざまなお客様との対応の中でも、特に慎重に対応するべきクレーマーへの対応について、特に覚えておいて欲しいポイントをいくつかご紹介します。
「上司を出せ」には一度では応じない
よくあるクレーマーの発言で一番メジャーなのは「上司を出せ」です。
担当者レベルでは自分の怒りは収まらない、上の立場の人間がわびを入れろと要求してくるのがこの「上司を出せ」という言動なのですが、クレーマー対応の中で一番間違ってはいけないのが、安易に上司を出すことです。
実際、上司に判断を仰ぐ必要も出てきますが、上司が状況を判断して決断するためには、あなたからの簡潔な報告が必要不可欠です。
報告もないのにいきなり表舞台に上司を連れてきて、事情もわからないのに決断をさせるようなことがあってはなりません。
では、実際にクレーマーが上司を出すように要求してきた時、どのように返答するのが一番効果があるのでしょうか。代表的な例文をいくつかご紹介します。
(1)私がこの件の責任者ですので、私が判断いたします。
(2)上司には既に相談しておりますので、判断は変わりません。
(3)具体的なご用命をお知らせください。そのうえで上司の裁可を仰ぎます。
(1)と(2)は、クレーマーが謝罪とともに要求してくる「金品」について、上司からそれを引き出そうとすることを防ぐ行動です。
上司であれば中間管理職であるがゆえに、話を穏便に済ませようとして、金品を要求すると応じやすいことをクレーマーは分かっているのです。
それを防ぐためには、上司を表に出してこないことです。クレーマーに「検討の余地がある」と思わせては思うツボです。
(3)については、上司の裁可を仰ぐという意味で検討の余地をにおわせているようにも思えるのですが、検討するからには「具体的な内容を教えなさい」と、クレーマーに反論しているのが特徴です。
実は、クレーマーに具体的な要求を語らせると、その内容によっては「脅迫」や「業務妨害」などの罪に問えることがあるのです。
その際は、録音や第三者による証言が必要になってきますが、相手に話をさせてぼろを出させる方法とも言えます。
トラブルの原因に対してお詫びをする
クレーマーの中には、自分がなぜ怒っているのかを「自分で考えろ」とこちら側を突き放して、考えさせた結果としてお詫びの金品をせしめようと考える人もいます。
この時、なぜ怒っているのかつかめないまま、論点のずれた謝罪をしてしまうと「何に対して謝罪しているのかわからない」などと、相手の怒りに火を注ぐだけではなく、相手がさらに高圧的に要求してくることもあるのです。
確かに、こちら側が何らかのミスがあった場合は、当然お詫びすることも必要です。その時は、そのミスに対してお詫びをすればいいだけです。
お詫びの例文としては、次のようなものがあります。いい例と悪い例、両方をお示ししてみましょう。
(悪い例)
商品の中に髪の毛が入っていたとのことで、申し訳ありません。以後気をつけます。
(いい例)
商品の中に髪の毛が入っていたとのことで、申し訳ありません。スタッフの身だしなみに不備があったためでした。
以後、スタッフの服装チェックを店長が徹底して行います。このたびは申し訳ありませんでした。
悪い例といい例を見比べてもらうと「原因と理由」を述べている違いが分かってくださったと思います。
何に対して詫びているのか、今後そのようなことが起きないようにするために何をどうするのか、ここまでクレーマーに伝えることが出来ると、クレーマーがぐうの音も出ません。
クレーマーがこちら側を追及するのは、お詫びの品が欲しいからなのですが、最初からそれが欲しいと言えば恐喝にあたるので、こちら側から申し出させて受け取るという魂胆があります。
でも、追及のしようのないお詫びをすれば、クレーマーもそれ以上自分の魂胆を明らかにすることが出来なくなるのです。
「録音させていただきます」は会社側の切り札
クレーマーが一番嫌うのは、やり取りを録音されることです。
録音しますと宣言すると、録音をしないように激昂してくることもあるぐらいです。
後で証拠が残ってしまうと、恐喝や脅迫に値する行動だった場合、警察に逮捕される可能性もあるからです。
でも、会社側としては録音しますと宣言することは、理にかなっています。
それは「今後の誠実な対応のために記録させていただく」と言えば、その対応は全く合法です。
もちろん、本人の同意なく、内緒で録音してしまうと違法になってしまうこともありますが、宣言したうえで録音することは全く違法ではありません。
録音する機器がない場合は、第三者がいる場所を選んで話をすることです。
もし、その場所で何か話がこじれた時、その場にいる人が承認になってくれる可能性があります。
いずれにせよ、クレーマーは第三者や機器による自分の言動の記録を一番嫌います。
その心理を逆手にとって、会社側として「誠実」を表に出しつつ、録音などの対応をするようにしましょう。